中古住宅といっても様々な物件があり、どのように選べばいいのか途方に暮れている方がいるかもしれません。
実際に専門家である建築士が中古住宅をリノベーションをする目的で選ぶならどこに注目して、どのような基準で選ぶのでしょうか?
今回は建築士がリノベーションをするために購入する、中古住宅の選定基準をまとめてみました。
中古住宅を購入してリノベーションを検討しておられる方は ぜひ参考にしてみて下さい。
建築士が中古住宅を購入するときの条件
中古住宅でも色々な状態で売買されていますが、 まず前提にするのが、リフォーム前の物件であることです。
リフォーム済で売りに出されている物件は、その分費用が高く売られています。
これからリノベーションをするのですから、リフォーム前の物件(リフォームしていない物件)を選びます。
『リフォーム』と『リノベーション』の違い
ここで簡単に『リフォーム』と『リノベーション』の違いを説明しておきます。
一般的に『リフォーム』とは劣化したものを、元の形に戻す修繕工事のことをいいます。一方、『リノベーション』というのは『リフォーム』だけではなく、デザインや間取りを変え、性能を向上し、付加価値をつける工事をいいます。
『リノベーション』工事は『リフォーム』工事の一部と言われています。
このブログでは 大規模な間取り変更を伴う改修工事を意味しているので、『リフォーム』ではなく『リノベーション』工事として書き進めていきます。
・建築士は まず、築年数をチェックします
まずは中古住宅の築年数をチェックします。
築年数という観点からみると、ぜひ記憶にとどめておいてほしいのが 昭和56年(1981年) と 平成12年(2000年) です。
それぞれ、 昭和53年(1978年)宮城県沖地震、 平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災 を受けて、建築基準法が改正されました。
昭和56年以前に建てられた物件は『旧耐震基準』と呼ばれます。
『旧耐震基準』の建物は、購入してリノベーションをすることもできますが、耐震性能を最新の現行基準まで引き上げるのに多額の費用がかかることが多いです。
ですから、昭和56年(1981年)以前に建てられた物件は、購入する中古住宅の選択肢から除外します。
昭和56年(1981年)以降、平成12年(2000年)までに建てられた建物は『新耐震基準』と呼ばれています。昭和56年(1981年)の法改正では、壁の量を増やす規定が加えられました。『新耐震基準』の建物は劣化がなければ概ね大丈夫だと思われていましたが、平成28年(2016年)の熊本地震で、新耐震基準の住宅が多数倒壊していたと報告がありました。ですから、この時期に建てた建物は、ぜひ耐震診断をして現況を把握してから『リノベーション』するのをおススメします。
平成12年(2000年)以降に建てた建物は、さらに 壁の配置バランスの規定と接合部の確認をする規定が加えられました。これは『現行基準』と呼ばれており、現在の基準です。物件の状況にもよりますが、平成12年(2000年)以降に建てた建物構造はそれらの規定を充たしたものとして、問題ありません。
購入後にリノベーションをするということですので、昭和56年(1981年)以降に建てられた中古物件を選びましょう。
・その次に構造や工法をチェックします
まずは一般的な木造についてお話します。
木材は 現場で簡単に加工することができ、リノベーションしやすい構造材料です。
木造には、代表的なもので『在来軸組工法』と『ツーバイフォー工法』がありますが、リノベーションしやすいのは、比較的自由に間取り変更ができる『在来軸組工法』です。
『在来軸組工法』というのは柱と梁、筋交い(斜め材)で組まれている、いわゆる日本古来の木造住宅です。柱と梁は大工さんの技術により仕口加工をされ、部材を組みます。 大きな梁を柱で支えるので、空間を自由に構成できます。
一方、『ツーバイフォー工法』というのは壁などの構面で箱型に構成されたアメリカから伝えられた工法です。
こちらは近年の大地震で実証され、脚光を浴びている工法です。『ツーバイフォー工法』が地震に強い理由は、細かい規定に基づいて箱型の壁をガッチリ組み合わせてあるからです。その代わり、細かい規定があるために とれない壁もあります。たとえ とることができる壁だったとしても、解体するのがものすごく大変だとよく現場で耳にします。耐震性があり 地震にも強く 頼もしい工法なんですが、窓一つ追加するだけでも実は大変です。
『在来軸組工法』の中古住宅を購入して、リノベーションをする時に耐震性能を『現行基準』まで引き上げて構造補強をすれば、『在来軸組工法』でも建築基準法レベルの 地震に強い家にすることができます。
また、建物形状で凹凸がある物件は複雑な構造になっていると推測できるので、できるだけ単純な屋根形状の中古物件を選ぶのがいいでしょう。平面形状が長方形で、屋根は 寄棟より切妻 といった感じです。
その他、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の場合は、構造がシンプルにできていて リノベーションがしやすいことが多いです。構造骨組みはさわらず、その空間内で間仕切り壁を自由に増設することができます。
さらに中古住宅を購入するときは 増築や拡張まで配慮します
・駐車スペースの確保ができるかをチェックします
車で生活をする富山県では、敷地内に駐車スペース 最低でも 3台分 を確保できるか、が重要なポイントになります。
(夫婦で車2台所有していて、それに 来客時の1台分をプラスすると、最低3台は必要かもしれない という計算です)
富山市内で築20年を超える家だと、道路からすぐに玄関があり、その横に1台だけ駐車スペースがあるという物件を見たことがあるかもしれません。昔の住宅団地を車で走っていると、このような家をよく見かけます。
当時は今のように、一人一台 車を所有していなかったから、駐車スペースは1台しか必要なかったのでしょう。今、実際そこで暮らそうとすると、駐車スペースは最低3台分は確保したいです。
解決策として以下の2パターンが考えられます。
・庭を壊して駐車スペースにする
・玄関部分を大幅に減築して、駐車スペースを確保する
専門家に、その中古住宅に合った方法を判断してもらうといいですね。
建築士に相談してみましょう。もしホームインスペクションをするなら、その時の建築士に相談してもいいかもしれません。
・セットバックが必要かをチェックします
敷地が面している道路が 建築基準法 第42条2項道路の時(幅が4m未満の場合)は 注意が必要です。
この2項道路に接道する敷地は、道路境界から後退して建物を建てなくてはいけないルールが建築基準法で定められています。これを『セットバック』するといいます。
『セットバック』する目的は、火災発生時や災害時に緊急車両が通行できるようにするためで、道路幅を最低4m確保しなくてはいけません。
敷地が接している道路の状況により『セットバック』のラインは変わります。
『セットバック』ライン内には建物を建てることができませんし、門や塀などを作ることもできません。
購入してそのまま住む分には 特に関係のない話ですが、購入後に建て替えたり増築をする時に『セットバック』が必要になるので、購入時に注意が必要です!
・管理状態が良好かをチェックします
住んでおられた人が建物の維持管理をしっかりしていた物件と、そうでない物件では、劣化状況が違います。
例えば、庭木の手入れを毎年されていた場合と、庭木が生い茂っている場合では、維持管理費用が全然違ってきます。
外壁や屋根についても同様で、計画的にお金をかけて良いコンディションを保っている物件では、そこに修繕費用がかかりませんが、何も手を加えていない物件では、修繕費用がかかってきます。
維持管理をしていなかった物件は、それを修繕しないといけませんので、購入後にお金がかかります。
そして、その劣化部分から建物の傷みが進行していたら、見えないところで大被害に発展している可能性もあります。
住人の管理状態で購入後の『リノベーション』予算に影響しますので、しっかりと見極めることが大切です。
どうせ購入後に『リノベーション』をするからどんな中古物件でも構わないだろうと思っていたかもしれませんが、物件によっては 購入しない方がいい物件があるかもしれません。
中古住宅を見極める上でちょっとだけ知識があると、ムダなお金をかけずに スムーズに『リノベーション』工事を進めることができるはずです。
中古住宅を見極める『ホームインスペクション』サービスを利用しよう!
『リノベーション』するために購入する中古住宅がの条件がわかりましたか?
不動産業者にも相談しながら、購入する中古物件をじっくり選んでみてください。
その際、中古住宅を購入する前には専門の建築士による住宅診断(ホームインスペクション)を行い、現状どのような不具合があるのかを把握しておくことが重要です。
購入を決める前にホームインスペクションを行い、『リノベーション』後に安心して暮らせるようにしたいですね。
住まいるオスカーでは、『ホームインスペクション』のご利用時に、必要に応じてリフォーム提案をさせていただいております。
『ホームインスペクション』の結果をふまえて、リフォームした時の概算まで知ることができますので是非ご利用下さい。
最後に
住まいるオスカーでは、中古住宅売買時のサービスとして多くのメニューを用意しております。補助金のご相談も承ります。
ご利用希望の方は、メールにてお問合せください。
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